「歴史」について語ることの危険さ
どうも!
最近アイルランドもやっと暖かくなってきてとってもハッピーなこの頃です。
(といっても気温は20度前後ですが笑)
さて、本日は、『「歴史」について語ることの危険さ』について考えたいと思います。
僕がこの記事を書こうと思ったきっかけは、ある日の授業でのこと。
僕がいるクラスでは、日本人韓国人中国人ロシア人サウジアラビア人フランス人ルーマニア人スペイン人が一緒に勉強しています。
先生も、アイルランド人アメリカ人イギリス人ポーランド人と割と多人種な学校です。
事件(?)のきっかけとなったのは、スペイン人のおじさん。
このおじさん、いろんな所に旅しているのかたくさん本を読んでいるのか、様々な国の情勢について知識を持っており、授業中ことあるごとに自分の持つ知識について語っています。
いわゆる「俺の若い頃は〜」系おじさんと一緒で、とにかく自分が知っていることを言わなければ満足しないんですね。
そんなおじさんが、授業が始まる前に、いきなりサウジアラビア人の女性に対して中東事情のことを質問攻めし始めました。
この時点で僕は、「あれ?このおじさん…」と思ってましたが、サウジの女性もちょっと戸惑っている様子はあったものの普通に答えていたので、スルーしました。
授業時間になるとポーランド人の先生が教室に入ってきて、「何の話をしてたの?」と尋ねました。
スペイン人のおじさんは、「中東について〇〇(サウジの女性)に質問してたんだよ。次はロシアとポーランドについて話そうか」とロシア人の生徒とポーランド人の先生を見ながら言い出したんです。
ご存知の通り、ロシア(旧ソ連)とポーランドの歴史的関係は良好だったとは言えません。
もちろんこれは冗談で、その後「冗談冗談」と何度も言いながら笑ってましたが、彼がロシアとポーランドのことについて言及した時、クラスが一瞬凍りつきました。
「いや、それは冗談でも言うべきではないだろ…」とクラス中が思っていたに違いません。
結果的に、みんなこの発言を「冗談」として捉え、事なきをえました。
さらなる事件2(?)は、つい昨日のこと。またもやポーランド人の先生の前で起きました。
授業のトピックは、北アイルランド問題について。
北アイルランド問題をめちゃめちゃ簡単に説明しますと、アイルランドという島はイギリスによって侵略され、その「遺産」として残っているのが今の北アイルランド。イギリスからの植民者の多くは北アイルランドに移住し、その子孫と、元々住んでいたアイルランド人が今の北アイルランドに住んでいます。ですので、この二者間の関係はかなり悪いです。ちなみに、北アイルランドは現在イギリス連邦の構成国です。
(北アイルランド問題は、国籍・宗教などが複雑に絡み合い、複雑かつ今現在も続いている大きな問題なので、ぜひ論文などを参照していただきたいです。)
さて話を本題に戻すと、スペイン人のおじさんは北アイルランドについて彼なりの意見を述べていました。
その途中で突然、' I'm so sorry for Poland. 'と言ったのです。ポーランド人の先生を見ながら。
文脈上なんの関係もなく、突然そう言われたので、ポーランド人の先生はびっくりして「なんで今ポーランドについて言及したの?」と彼に問いました。
当然の疑問です。
するとおじさんは、「ポーランドも侵略されたから」と返答しました。
「は??????????」
みーんなの顔が凍りついてました。
ポーランド人の先生は、「確かにそれは事実だけど今それを言う必要はないよ」と少し苛立った様子でした。
おじさんはかなり一生懸命謝っていたのでそれ以上険悪な空気になることはありませんでしたが、本当にヒヤヒヤしました。
やはりこのおじさんは、自分が知っていることや思っていることは、よく考えず口に出しちゃう癖があるみたいです。多分悪意とかはなく無意識なんですよね。(それが一番こわいですが)
どの国にだって、口に出したくない悲惨な歴史はあります。
それが被害者側であろうが、加害者側であろうが。
特に侵略され続けた歴史を持つ国の人々は、そのことに言及されることはかなり心が痛むことだと思います。
ですから、「歴史」や「政治」に関する話題は、海外では極力避けるべきだと思います。どんな言葉が相手を傷つけるかわからないし、史実は1つでも「歴史観」は人それぞれなので無用なトラブルを招きかねません。
「歴史観」によるトラブル
僕のルームメイトのフランス人の子が、こんな話を聞かせてくれました。
授業で冷戦について学んでいた時、あるロシア人のクラスメイトが、先生に対して「あなたはアメリカ側とロシア側どっちをサポートする?」と質問したそうです。
尋ねられた先生は、アメリカ人でもロシア人でもなく、その話題を口にしたくなかったため「それは答えられない」と返答したそうです。
それでも、ロシア人の生徒はしつこく聞き続けたそう。
それで先生も困りかねて、「どちらかと言えばアメリカ側かな」と言うと、ロシア人生徒は逆上し、先生に罵声を浴びせ教室を出て行きました。
後日この生徒は学校を退学処分となったそうです。
「先生、なんで答えちゃったのよ」、
「言うとしてもロシア側って言っときなよ」感は否めませんが、歴史観を巡って起きたトラブルの典型的な例だと思います。
日韓問題…
日本と韓国間でも、不用意な発言でトラブルは起きてしまうかもしれません。
先ほどのスペイン人のおじさんについて、日本人と韓国人と僕の3人で話していた時、おバカな日本人の友達が冗談で「じゃあ竹島について話そうか」と笑いながら言いました。
すると韓国人の友達は、「もちろん韓国のものだよ!」と冗談ではなく本気で言いました。冗談とは捉えられなかったのです。
二人は、なぜ竹島が自国に属するかについて議論していましたが、「これはヤバイ」と思った僕は、「その話はやめよう」と二人の会話を制しました。
止めなかったら、危うく大げんかになってしまったかもしれない。
メリットはあるの?
もちろん、歴史について全く語るなという訳ではありません。
相手に正しく伝われば、素晴らしい学びを得ることもできます。
先日、僕はイスラエルのインターンシップ面接があったため、授業に遅刻しました。
先生に「なんで遅れたの?」と聞かれると、「イスラエルにインターンに行くための面接をしてたんです」と答えました。
授業が終わった後、たくさんの人が僕のことを応援してくれました。
特に、サウジアラビアのとっても優しくて紳士で色んなことを教えてくれるお父さんのような存在の男性が、「イスラエルに行くことはとっても貴重な経験になるよ」と言ってくれて、その理由について教えてくれました。
僕はもともと、イスラエルとパレスチナの関係が悪いことは一般常識として知っていましたが、恥ずかしながらアラブ人がイスラエルのことを良く思っていないことは知りませんでした。そしてパレスチナ人は、もともとアラブ人であることも知りませんでした。(無知はこわいです)
彼は、「パレスチナ人はもともとアラブ人で同胞だから、その同胞の国が奪われたことが許せない。僕らはユダヤ教もユダヤ人も憎んでいないが、イスラエルという国は認めることはできない。」と語ってくれました。
当事者の発言であるだけに、なんとも言い難い感情になり今も心に滔々と刻まれています。
これは歴史について話す、良い面です。
相手が非常に良い方だったこともありますし、僕から「中東について教えて!」なんてぶっきらぼうなことを言っていないのもありました。
しかし、歴史について他国の人と語ろうとすると、それが良い方に転ぶか悪い方に転ぶかなんてことは分かりません。
ですから「なるべく語らない」ことが大切だと思っています。
皆さんも海外に行かれる際は是非気をつけてください。
今日は、そんなセンシティブな話題でした。
ではまた。